セブンイレブンで虎になる女

自分のかつぜつ(なぜか変換できない)の悪さに絶望することがある。というかあった。


仕事終わりに、疲れたなータバコ買うかなーと思ってセブンイレブンいい気分に入った。店員はアジア諸国のどこかの国の出身のようだった。東京は本当に外国人の店員が多い。初めて入ったセブンだったのでタバコの番号を見るのが億劫で、

「キャスターの五ミリひとつ」

と言った。店員は爽やかに返事をして私に背を向けた。ポプテピピック(1日1ページ更新されるweb漫画)の今日分の更新まだ見てなかったなーとか思っていると目の前にドーナツが置かれた。レジ横でセブンがドーナツを売り始めたことは知っていたが買ったことは一度もなかったのではじめて見たドーナツの包装に私は驚いて、思わず「はっ!?」と叫んでしまった。店員が会計を進めようとしたため「ちょ、まってまって!」とあわてて叫んだ。店員が突然焦りだした私を不気味そうに見ていた。私が、「キャスター、キャスターの5ミリ1つ。○○番!」と言うと店員は爽やかに返事をして流暢な動きでタバコを取り出し「420円です」と流暢な日本語で言った。


無事タバコを購入し店を出たが、帰りの電車の中でずっともやもやしていた。何故キャスターがドーナツになるのか…?その謎が解けたのは翌日、いつも行くセブンに行ったときだった。


昨日のドーナツが引っかかっていて、何気なくドーナツが陳列しているショーケースを見ていた。そういえば昨日出てきたドーナツはカスタードクリームドーナツだった。まさか。

「キャスターの五ミリひとつ」が「カスタードクリームドーナツ」に聞こえた…?

いやまさかなと思った。でもそれしか考えられない。店員はトンチンカンな商品を出してきたのではなく、私のかつぜつが悪かったのが原因だったのだ。顔が熱くなるのがわかった。恥ずかしい。「ケッたばこの銘柄ぐらい覚えとけよ、わかんないからって適当な商品出してんじゃねーぞ」とか思ってた自分が恥ずかしい…。キャスターがウィンストンに変わったのも知っていて、面倒でキャスターと言ってしまったところから恥じた。これじゃマイセンマイセン怒鳴ってるジジイと変わんないよな。心から自分の考えを恥じた。ごめんな店員。かつぜつの悪いクソアマのせいで無駄な時間とらせちゃって。ごめんな、ごめんな…。私は昔教科書で読んだ虎になった男を思い出した。


己に非はないと思い込み、進んでタバコ名を正式名称で言ったり、番号でタバコを注文するよう努めたりすることをしなかった。かといって又、自らのかつぜつを省みようともしなかった。共に、我が臆病な自尊心と、尊大な怠惰心の所為である。己のかつぜつは人から遠ざかり、益々己の内なる自尊心を飼い太らせる結果となったのだ。


せめてもの償いとカスタードクリームドーナツとコーヒーのホットを買って店を出た。
これからは絶対タバコは番号で買おう。虎と成り果ててしまう前にかつぜつを治そう。