粋なピンクジン


古本の青空市なんか見かけると、
その日の用事も忘れて吸い込まれていってしまう。

いつ読むのかわからない本をジャケ買い、というか
タイトル買いしては家に本が溢れていくのはどうなんだろうと
思いながらも、案外充実感があったりする。



その日購入した本の中でも気に入ったのは「昼下がりのギムレット」。

いろんなお酒を主役にした短編集。著者はオキシロー。
その後半にでてくる「粋なピンク・ジン」という話では
甘くて軽いカクテルしか知らなかった主人公が
苦くて強いピンクジンを飲んで驚くところから始まるものがある。
その話を読んでからピンクジンが飲んでみたくて仕方なくなった。



早速バーに行きメニューからピンクジンの名前を探すが見つからない。

確かに文字として見たことがないし飲んでる人も見たことない。
メニューを行ったり来たりする私を見かねて、
マスターが「メニューにないものでもお作りしますよ」
なんて声をかけてくれたもので、ピンクジンを注文した。
やはり頼む人がいないのか、レシピを何度も確認しながら作っていただいた。

作り方はいたってシンプルで、
ジンにアンゴスチュラ・ビターズ(苦い薬草系のリキュール)を
数滴垂らしてシェイクするだけ。



カクテルグラスに注がれたピンクジンは名前どおりの
ほんのりピンク色。細かい氷の粒がキラキラ輝いていた。

唇に触れた辞典ではキンキンに冷たくて
舌に触れると一気に熱くなって舌の中の中までジンが
じわ~っと染み込んでいく感覚が癖になりそう。
そりゃそうだ、ほとんどジンだもん。

ピンクジンを頼んだ時点で結構ほろ酔いだっただけど
ガツンとした衝撃的な味に一気に目が覚めた。
ピンクジンに完全に魅了されてしまった。



適当に手にとった本から新たなお酒との出会いがあるなんて
ロマンチックで素敵だなと思った。